宮沢賢治の代表作、童話「銀河鉄道の夜」より。ジョバンニが、友人カムパネルラの様子に心揺さぶられ、自分の悲しみに思い悩み、目を涙でいっぱいにしながら、その孤独な心情を吐露する。
どうして僕は
こんなにかなしいのだろう。
(どうして僕はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)ジョバンニは熱って痛いあたまを両手で押おさえるようにしてそっちの方を見ました。 (ああほんとうにどこまでもどこまでも僕といっしょに行くひとはないだろうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろそうに談しているし僕はほんとうにつらいなあ。)ジョバンニの眼はまた泪でいっぱいになり天の川もまるで遠くへ行ったようにぼんやり白く見えるだけでした。(宮沢賢治「銀河鉄道の夜」より)
宮沢賢治 Miyazawa Kenji(1896 – 1933) 岩手県花巻市出身の詩人、童話作家。